ゲド戦記 ★☆☆☆☆(=最低評価)
公開前から各メディアで取り上げられて、何かと話題のジブリ作品、ゲド戦記を観てきた・・・が、ファンには申し訳ないけど、ありゃダメだわ(^-^;
特に、小さなお子様連れには、あんまりお勧めしない。これから鑑賞を考えてる方々には、原作の「ゲド戦記・全6巻」アーシュラ・K.ル=グウィンを先に読んでから、知識の下準備をお勧めする。物語の中心は第3巻らしいので、それだけでも読んでおくと序盤からの理解度が違って、それなりに楽しめるのかもしれません。
※以下、ネタばれありの個人的感想です。
作画の調子も、挿入される音楽も、豪華な声優陣も、全体の雰囲気も、そこらへんはさすがのジブリだから言うことないんだけど、そもそも舞台設定が突飛なのに前提の説明がなさ過ぎる。冒頭から一気にストーリーへ入り過ぎで、土地の名前も場所の名前も意味不明なまま本題へいっちゃう。親父が監督だの息子が監督だの云々じゃなくて、あれじゃあ初見の人間にはまずついていけないよ。
タイトルになってる“ゲド”って単語なんて、僕が覚えてる限り、劇中ではたった一回、つぶやく程度にしか出てこないし、注意して聞いてないと聞き逃してしまう。実際、一緒に観てた相方はエンドテロップが出るまで“ゲド”が誰なのか、最後まで分からなかったみたいだし。光と陰(影)、生と死がこの作品の根幹にあるんだけど、ボーッと観てるだけじゃ、理解できないまま流れちゃう。せめて、頭の中で意味を反芻して、考えられる時間が欲しかった。その答えが見つからないまま、次々シーンが変わっていくんで、もうそれを追うので一杯一杯になっちゃう。
主人公が数回流す“涙”も「なんで泣いてるの?」って、頭の中に疑問符が浮かぶ。ちゃんと状況なりを飲み込めると分かるんだろうけど、そこまで観てる側の気持ちの階段が上がってってないんでダメなんだよなぁ。
特に、劇中のキーとなるアカペラシーンも、歌詞の文言を文字情報として出してくれないと、意味不明すぎ。ちゃんと聞いてればいいだけなんだろうけど、あまりにも観客に押し付け過ぎた。あのシーンは大事な場面だっただけに惜しい、実に惜しい。それに、登場人物全員がとにかく暗い。で、その素性も背景もほとんど描かれてない。何が何だか分からないまま、どんどんお話が進んでいくんで、消化不良気味のままラストシーンを迎えてしまう・・・。
当初、宮崎駿監督がこのゲド映画化に反対したってのも、納得できなくはない。裏話としては、主人公の選択が宮崎監督親子で食い違ったのが、そもそもの出発だったようだ。アレン少年目線で物語を見るのか、ハイタカ目線で物語を見るのか・・・その違いだけで、ずいぶんと内容が違って見えてくる。“ゲド”の生涯の一片を描くなら、大人側を主役に立てるべきだった気がするなぁ。原作の1巻2巻あたりで、ゲドの少年時代が書かれてるみたいだし、それがどうアレンと被るのかすら、よー分からん・・・返す返すも、惜しいデキだ。
毎回、自然と人間の共存共生という、壮大なテーマと現代への警鐘が込められているジブリ作品、今回は“やり過ぎた”というか“狙い過ぎた”感が否めない。もうちょっとジックリと作品に感情移入できるように描いてもらいたかった。とりあえず、理解できてない部分が多々あるんで、原作を読んでみんといかんなw
ま、とてもじゃないけど、この作品が興行収入的に成功するとは思えないな。よく分からん海外メディアで絶賛・・・とかなったら知らんけど、それも難しいんじゃないかねぇ。